私は翻訳字幕がとても好きです。洋画は字幕付きのものを選んで見ます。
最近でこそ、映画やDVDなど日本語吹き替え版が一般的になりました。
しかし、私が映画の世界に入った頃は、
映画館では、アニメ以外ほぼ字幕が一般的でした。
ご存知のとおり、翻訳字幕は直訳ではありません。
人間が1秒間に判読できるのは4文字と言われています。
映画の翻訳字幕には5秒間、10文字2行以内。
つまり、20文字以内というルールがあります。
瞬時にセリフの意味合いを理解させるために、
四字熟語を使うなど、原文直訳にとらわれることなく
全体の意味をくみ取って訳す“意訳”が駆使されています。
あくまでも私のあいまいな記憶ですが、
字幕にすることでカッコいいと印象に残っている言葉があります。
オリビア・ニュートン・ジョンの
主演映画「ザナドゥ」の主題歌「ザナドゥ」。
その一節にThey call it Xanaduがあります。
通常「彼らはそれをザナドゥと呼ぶ」と訳します。
映画のサウンドトラック盤やDVDなどでも
人々はザナドゥと呼んでいる」と訳されています。
私は公開時字幕で読んだのは
「人呼んでザナドゥ」という文字。
They call→人呼んで
と訳した文字を見て、
カッコいいと思ったことを記憶しています。
1980年ころ、映画館でかける字幕と
ビデオで発売された字幕が異なることが
結構あったと記憶しています。
記憶違いでなければいいのですが…
それが、今
オペラの1部楽曲の撮影や編集をすることになり
声楽の字幕をつけることがひとつの楽しみになっています。
多くのオペラはヨーロッパで作詞、作曲されたもの。
意味合いが日本語とニュアンスが違う場合があります。
私が最近手掛けた「乾杯の歌」。
ヴェルディの代表的オペラ『椿姫(La traviata)』の第1幕で演奏されます。
主人公のヴィオレッタは高級娼婦で、舞台は「ヴィオレッタの家で開かれている豪華な社交界場」
青年貴族のアルフレードが会場で”乾杯の音頭”をとる歌場面。
ヴィオレッタとアルフレードが恋に落ちるキッカケとなる歌です。
一節にTutto è follia nel mondo ciò che non è piacer.
「この世はすべて狂気よ、喜びでないものは」
folliaは直訳すると“狂気”です。
でも、「この世はすべて狂気よ、喜びでないものは」
この字幕を読んだ日本人は
瞬時に理解できないのではないでしょうか?
そう歌の本質と大きくかけ離れているのです。
ニュアンスとしてバカという意味合いもあると思い
“バカバカしい”とか
漢字で”馬鹿馬鹿しい”とすると文字数が6文字になり
文字数の割に判別しにくい文章です。
歌詞の意味合いとしては“人生の喜びでないもの”として
宴で歌われるものなので
“無意味”という字を当ててみました。
実際にYouTube動画の1’20”のところをごらんください。
https://youtu.be/s1BnKXV4xg8
いかがでしょうか?
ひっかかりなく見られるのではないでしょうか?
わたしも翻訳は本業ではないので
原語の直訳から
類語辞典を引き、意訳をするのがパターンですが。
日本人のニュアンスから、
意訳を当てるのは初めてでした。
翻訳字幕は人に違和感をもたせることなく
ストーリーに集中させることが大切
ということを改めて思いました。